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【Ep. 2】お悩み:かわいい一人娘が高校に行きたくないと言い出しました

※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切の関係がありません。

 

 

悩めるシンガポール在住者の前に、忽然と姿を表す場末のスナック、それが「夜間飛行」。

赤い布張りのソファに、古ぼけたミラーボール、そしてそれらを包み込む、懐かしい昭和の歌謡曲。

これは異世界? それとも幻?

時代に取り残されたようなその空間は今夜も、疲れた人々の心にそっと寄り添う……。

 

 

このシリーズの過去記事↓

 

 

 

 

 

俺には、蝶よ花よと育ててきたかわいい一人娘がいる。

俺も妻も40を過ぎてできた子だから、そりゃあ生まれた時から猫可愛がりしたものだ。

だからまさか、15になったわが子に、

 

 

「高校には、行かない」

 

 

なんて言われる日が来るとは思わず、呆然としてしまった。

俺たちの育て方の、何が悪かったんだろうか……?

 

 

「華子ちゃんっ?!?!」

 

 

妻の光代が動転して叫んだ。

完全に声が裏返っている。

しかし娘の華子は飄々としたもので、しれっと、

 

 

「だから、高校には行かないってば。今言ったでしょ」

 

 

なんて言ってのけるのだった。

なんとか冷静さを取り繕いながら、今度は俺が声をかける。

 

 

「華子、おまえ、やりたいことでもあるのか?」

 

 

「うん」

 

 

「……おお、そうかそうか! もうやりたいことを見つけたか。それで、何がやりたいんだ?」

 

 

「私、京都に行って、舞妓さんになりたい」

 

 

「……!」

 

 

絶句してしまった。

確かに去年、海外で生まれ育った華子をはじめて京都に連れて行った際、本物の芸妓を見て大層感激はしていたが……我が娘がそこまで単純だったとは。

 

 

「おまえ、舞妓がどういう仕事か知ってるのか?」

 

 

「酔っぱらいの相手でしょ、主に」

 

 

「そ、それがわかってるならなぜ!」

 

 

「……でも彼女達は、同時に、とても重要な日本文化の担い手でもあるじゃない」

 

 

「確かにそうかもしれないが、な、なにもお前がなる必要は無いだろう。成績はいいんだから、高校、いや大学くらい……」

 

 

「やだ」

 

 

「親に口答えするのか?!」

 

 

「うわ、やめてよ。みっともないよ、そのフレーズ。こっちは自分の意思を伝えてるだけでしょ」

 

 

実の娘に、みっともないと言われ、言葉に詰まってしまった。

もう10代ともなると、立派な大人だ。

文字通り子供だましの言い回しなど使おうものなら、痛いところを的確に突いてくる。

 

 

その時、視界の横を、素早く何かが横切った。

 

 

バシィッ!

 

 

光代が思い切り、華子の頬をビンタしていた。

打たれた頬を押さえる華子。

号泣する光代が、叫ぶ。

 

 

「お母さんがどんな思いであなたを育てたと思ってるのよぉっ!」

 

 

絶叫するなり光代は華子にすがりつき、ガクガクと揺すり始めた。

 

 

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