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【Ep. 15】お悩み:シンガポールに来てから、夫のダサさが目につきます

※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切の関係がありません。

 

 

悩めるシンガポール在住者の前に、忽然と姿を表す場末のスナック、それが「夜間飛行」。

赤い布張りのソファに、古ぼけたミラーボール、そしてそれらを包み込む、懐かしい昭和の歌謡曲。

これは異世界? それとも幻?

時代に取り残されたようなその空間は今夜も、疲れた人々の心にそっと寄り添う……。

 

このシリーズの過去記事↓

 

 

 

「ねぇー。まだ水漏れしてるんだけど」

 

 

「……だから、大家さんにはもうメッセージしたって言ってるだろ?」

 

 

「メッセージだけじゃ伝わってないのかもよ? 電話してよ、電話」

 

 

「……」

 

 

完全にスルーして、携帯をいじってる智洋。

私は胸の中の息を全部吐き出すように思い切り、はあっと、大きなため息をついた。

 

 

シンガポールに引っ越してきてから、智洋は全く頼り甲斐がなくなってしまった。

智洋はかつての「憧れのお兄さん」で、私の初恋の人。

そんな人と結ばれて天にも昇る気持ちだったあの頃が、とても遠く感じてしまう。

 

 

英語が苦手な智洋は、水漏れみたいにシンプルなことを解決するのにさえ、時間がかかってしまう。

そして正直、言葉に詰まってニヤニヤしてる時とか、ちょっと……

 

 

「……カッコワルイ」

 

 

心の中で呟いたはずなのに、気づくと小さな声が出ていた。

智洋が、はっと携帯から顔を上げる。

まずい、誤魔化さなきゃ。

 

 

「か、カッコワルイよね私、この前、生クリームかと思って買ったやつがサワークリームだったの。よく見たら書いてあるのに、あは、あはは」

 

 

「……そうだったんだ。美保、あのさ……」

 

 

「あ、そうだ! 私、ちょっと、散歩がてら買い物行ってくるね!! ごめん夕飯、できてるから食べておいて!!」

 

 

誤魔化せていないことはわかっていた。

だから、いたたまれなくて家を飛び出してきてしまった。

コンドの敷地から出た途端、ブワッと涙が噴き出してくる。

 

 

 

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