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【Ep. 11】お悩み:長年やってきた店を閉じることになり、将来に希望が持てません

※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切の関係がありません。

 

 

悩めるシンガポール在住者の前に、忽然と姿を表す場末のスナック、それが「夜間飛行」。

赤い布張りのソファに、古ぼけたミラーボール、そしてそれらを包み込む、懐かしい昭和の歌謡曲。

これは異世界? それとも幻?

時代に取り残されたようなその空間は今夜も、疲れた人々の心にそっと寄り添う……。

 

 

このシリーズの過去記事↓

 

 

 

 

俺とアンドリューはまさに戦友だった。

瞬く間に駆け抜けて行った00年代。徐々にビジネスが先細りになってきた2010年以降。

この18年、俺たちはあらゆるビジネスの荒波を、一緒に乗り越えてきた。

最後の最後、そう、今日この日まで。

 

 

「楽しかったよな」

 

 

「ああ、楽しかったな」

 

 

ファーイーストプラザにある、小さなホビーショップ。

これが俺たちの城だった。

扱うものは、子供が好みそうなものならなんでもござれ。

ガラクタにしか見えないような玩具から、最新のゲームソフトまで、あらゆるものを置いてきた。

商品は全て、俺が日本から買い付けてきた中古品ばかり。

この店を始めた頃は、連日ティーンエイジャーが押し寄せて大盛況だった。

いくら日本から買い付けても、すぐに売り切れてしまうものだから、いつだって俺たちは目が回るような忙しさに追われていた。

 

 

しかし、時代は移り変わる。

かつて「ファーイーストキッズ」と呼ばれた、ファーイーストプラザに集う若者たちも、いつしかもっと新しいモールへと遊び場を移して行った。

さらに、ネットショッピングの台頭で、小売業界全体が大打撃を受けた。

俺たちの店もここ数年は、一日に数人の客が冷やかし程度に立ち寄るばかりで、長いこと赤字続きだった。

それでもこの店を毎日開け続けてきたのは、アンドリューの意地だ。

しかしそれももう、とうとう限界に来てしまった。

 

 

「加藤、日本に置いてある分の在庫の処分、頼んじまってすまんな」

 

 

「なに言ってんだよ、兄弟。お前だってこれから、この店の片付けが待ってるだろ」

 

 

誰にも見守られないまま俺たちは、18年間続いたホビーショップ「チェン アンド カトー ブラザーズ」のシャッターを閉じた。

慣れた手つきで施錠してしまえば、それっきりだ。

俺たちの店の、最後の営業は、あっけなく終わりを告げた。

 

 

「……ちょっと、飲んで行こうか」

 

 

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