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【Ep. 10】お悩み:別れた彼女があまりに薄情でガッカリしています

※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切の関係がありません。

 

 

悩めるシンガポール在住者の前に、忽然と姿を表す場末のスナック、それが「夜間飛行」。

赤い布張りのソファに、古ぼけたミラーボール、そしてそれらを包み込む、懐かしい昭和の歌謡曲。

これは異世界? それとも幻?

時代に取り残されたようなその空間は今夜も、疲れた人々の心にそっと寄り添う……。

 

このシリーズの過去記事↓

 

 

 

 

久々に会った奈津は、少し化粧が濃くなったように見えた。

付き合っていたのはほんの2ヶ月前なのに、なんだか知らない人のようだ。

なんというか……綺麗になった。

それが悔しくてつい、憎まれ口を叩いてしまう。

 

 

「俺と別れて、なんだか派手になったな」

 

 

「そう?」

 

 

「ああ。また合コンとか行くようになって、男の目を気にしだしたせいなんじゃねえの?」

 

 

「……まあ、そうかもね」

 

 

そう言って奈津は、長いストレートの髪を、気だるそうにかきあげる。俺は、早々にこの場を切り上げることにした。

 

 

「じゃあ、うちに残ってたものは、全部返したからな」

 

 

「ありがと」

 

 

「お前……俺ら、曲がりなりにも結構真剣に付き合ってたのに、別れてから会うと結構冷たいのな」

 

 

「そう? そんなことないわよ。一応これでも、少しは悲しんだのよ」

 

 

「どうだか。前から、なんかつかみどころのない女だと思ってたけど、ほんとドライなんだな、お前」

 

 

奈津は相変わらずよく読めない表情のまま、ちらりと俺の方を見たかと思うと、彼女の私物が入れられた紙袋へと視線を落とした。

 

 

「……別に返してくれなくても、良かったのに」

 

 

「そんなわけいかないだろ。ドライヤーとか化粧品とか、結構高価なものだろ、それ」

 

 

「……」

 

 

「じゃあ、行くから」

 

 

「そっか。またね」

 

 

本当にそっけない女だ。嫌いになって別れたわけじゃないんだから、もう少し愛想よくしてくれたって良いだろうに……

そうは思ったが、口には出さず、俺はそのままカフェを後にした。

 

 

 

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