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【Ep. 2】駐妻・理乃の迷い、そして大胆な決断

※この物語はフィクションです

 

27歳で結婚以来ずっと専業主婦だった理乃。

日系大手商社に勤める夫、祐介のシンガポール栄転に伴って、3年前この常夏の国に引っ越してきた。

出世頭の優しいエリート夫を持つ、模範的な「駐在員の妻」だったはずの彼女の運命は、あの日を境に音を立てて変わり始めた……。

 

 
このシリーズの過去記事↓

 

 

 

「どうしたの?ボーッとしちゃって」

 

 

華子の声に、理乃はハッと我に返った。

 

オーチャードのど真ん中に位置するショッピングモールの2階にあるP.S. café は、理乃の大のお気に入り。

賑やかな街の中心部にあるとは信じられないほど、ゆったりとした時間の流れる居心地のいいカフェだ。

テラス席には、欧米人のカップルが二組リラックスした雰囲気でお茶を飲みながら、何やら話し込んでいた。

夕暮れの空が辺りの空気をオレンジ色に染め始めていた。

 

 

「えっ? いや……全然なんでもないの。ごめんなさい。」

 

 

取り繕うように、理乃は慌ててダージリンティーの入ったカップを口につける。

 

 

「……好きな人でもできたの?」

 

 

悪戯っぽい表情の華子の質問に、思わず飲みかけの紅茶を吹き出してしまいそうになった。

 

 

「ちょっと……何言っているの?私結婚してるのよ!」

 

 

華子は、理乃がシンガポールに引っ越してきて、すぐに通い始めたヨガ教室で知り合った。

この歳になると、本音を言い合える、気の合う女友達というのは本当に貴重な存在だ。

声が上ずってしまったのがバレなかっただろうか?理乃はドギマギしながら口元を拭う。

人生の酸いも甘いも噛み分けている華子には全てを見破られてしまいそうな気がする。

 

 

「あら、結婚してたら、他の人を好きになっちゃいけないのぉ?」

 

 

華子は理乃の動揺を気にする風もなく、さらりと言う。

そして夕やけの空をちらっとみて、少しだけ眩しそうに目を細めた。

 

 

「理乃、色々悩んでるんでしょう?」

 

 

そうだ、不妊に悩む理乃にそっと、評判のいいレディースクリニックのカードをくれたのは華子だった。

とにかく、勘が鋭く頭のいい華子に隠し事は無理だ。観念した理乃は口を開いた。

 

ダリルという魅力的なインストラクターに自宅のコンドミニアムのプールで出会ったこと。

あのエレベーター内での会話。水泳を教えて欲しいと言って、電話番号をもらったこと……。

 

 

Comment (1)
  1. 内藤千津子 より:

    シンガポールの、常夏、むせぶむよいな、空気。
    一瞬、自分が、自分と言うおんなが、どこかに行ってしまいそうで。
    いけない、いけない、思えば思うほど、ノスタルジックな自分を演じたくなり、どこかに潜んでいた、おんなの部分が、脇でで来るの
    魔法のランプに入ってしまうの。現実逃避だと言われてもいいから。
    魔法の夜を過ごしたくなる。
    魔法の様な夕暮れを過ごしたくなるの。もっと欲張って、シンガポールの夜更けから朝霧の中を歩いてみたくなるの。
    そんなシンガポール。魔法の国。続く

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