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【Ep. 17】理乃の欠乏感、そしてそれを満たす太陽

※この物語はフィクションです

 

27歳で結婚以来ずっと専業主婦だった理乃。

日系大手商社に勤める夫、祐介のシンガポール栄転に伴って、3年前この常夏の国に引っ越してきた。

出世頭の優しいエリート夫を持つ、模範的な「駐在員の妻」だったはずの彼女の運命は、あの日を境に音を立てて変わり始めた……。

 

(あらすじ)

誰もが羨むような専業主婦生活を謳歌していたはずの理乃だが、どこか心にぽっかりと空いた穴を抱えていた。

何年も前から望んでいるものの、子供に恵まれない。

真剣に向き合うことを避ける夫、お世辞にも良好とは言えない姑との関係。

そんな時、偶然にも自宅コンドミニアムのプールで、水泳インストラクターのダリルと出会う。

理乃は、ダリルに言葉では言い表せない運命的なものを感じてしまう。

そして親友の華子に進められるまま、ダリルに水泳レッスンを申し込み毎週顔を合わせるようになる。

屈託のない笑顔で夢を語るダリル。

それは理乃に過去の自分を思い出させるのだった。

「書くこと」が大好きだった、理乃は新たな創作活動を始める。

 

 

嫁姑の関係は悪化の一途を辿り、なんと理乃は義母から殴りかかられるという驚愕の事態に発展するのであった。

その事件の影響で入院することになった理乃に、ダリルから大きなお見舞いの花束が届く。

そこで、理乃はダリルの彼女に対する気持ちに気づくのだった。

チャイニーズイヤーのカウントダウンでお互いの気持ちを確かめあう二人。でも夫の祐介は、理乃に子作りをもう一度頑張ろうと言い出す。

 

 

さらには、ゴシップ大好きな駐在員妻、真美がダリルと理乃の関係を嗅ぎつける。逆にそれが理乃と、ダリルの心の絆を深めることになったのだが……そんな妻の異変を感じとった夫が逆に子作りに積極的になるにつれ、理乃の気持ちは冷めていくのだった。

そんな妻の姿に異変を感じる夫の祐介。ついには、無理やり妻を繋ぎとめようと、強硬手段に出るのだが……。

 

 

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あの出来事から、祐介とはずっとギクシャクしていたままだった。そう、無理やり押し倒されたあの夜……。

仕事から帰ってきた夫のために、きちんと夕ご飯を用意し二人で向かい合って食べてみるものの、二人の間には気まずい雰囲気が拭えない。

重苦しい雰囲気についに耐えきれなくなり、理乃は 祐介に喋りかけた。

努めて明るく……。

 

 

「今日は……お仕事どうだった?」

 

 

唐突だ。どうしようもなく唐突だった。

 

 

「うん。まぁ、普通だったよ。でも……」

 

 

黙々と箸を動かしていた祐介が、ピタリと手を止めて理乃を見つめた。

 

 

「もしかしたら、数ヶ月のうちに日本に帰任になる可能性が高そうだ。今日部長と話たんだが、日本に帰ればかなり高待遇になる、そんなニュアンスのことを言われた 」

 

 

理乃はギクリとした。

祐介はつまり、日本にいわゆる「栄転」できるチャンスがきた、と言っているらしい。

でも、日本に帰るなんて今の理乃には考えられない。

まるで悪夢を見ているようだった。

 

ようやくシンガポールで、この地で、自分の人生を取りもどす一歩が踏み出せたというのに……。

夫の転勤により、妻の人生というのはいとも簡単に左右されてしまう。

今までならそれはそれで仕方のないこと、と割り切ってこれた。でも今は……そんな風には、とても思えない。

何より、ダリルと遠く離れてしまうなんて、考えただけで辛い。「絶望」が理乃の体を包み込んでしまうようだった。

 

 

「いきなり、降って湧いたような話ね……」

 

「昔から、時々出ていた話さ。また最近それが再燃したんだ。正直、俺もシンガポールはそろそろ潮時だと思っているんだ」

 

「そうだったの?……知らなかったわ」

 

「まぁ、一生この国にいるわけでもないし、いずれは日本に帰るんだから。部長には、前向きに検討しますと言ってある」

 

 

妻である、私に相談もせずに…… ?!

思わずムッとしたのが表情に出たのか、祐介が理乃を除きこんで言った。

 

 

「理乃は、日本に帰りたくないのか?」

 

「日本に帰るかどうかより……私に何も相談してくれなかったのが嫌だわ」

 

「別にまだ決まったわけじゃない。それに、俺の意思というよりは、結局は会社の人事が決めることだから」

 

 

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