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【Ep. 10】駐妻・理乃の優しさ、そして動揺

※この物語はフィクションです

 

27歳で結婚以来ずっと専業主婦だった理乃。

日系大手商社に勤める夫、祐介のシンガポール栄転に伴って、3年前この常夏の国に引っ越してきた。

出世頭の優しいエリート夫を持つ、模範的な「駐在員の妻」だったはずの彼女の運命は、あの日を境に音を立てて変わり始めた……。

 

(あらすじ)

誰もが羨むような専業主婦生活を謳歌していたはずの理乃だが、どこか心にぽっかりと空いた穴を抱えていた。

何年も前から望んでいるものの、子供に恵まれない。

真剣に向き合うことを避ける夫、お世辞にも良好とは言えない姑との関係。

そんな時、偶然にも自宅コンドミニアムのプールで、水泳インストラクターのダリルと出会う。

理乃は、ダリルに言葉では言い表せない運命的なものを感じてしまう。

そして親友の華子に進められるまま、ダリルに水泳レッスンを申し込み毎週顔を合わせるようになる。

屈託のない笑顔で夢を語るダリル。

それは理乃に過去の自分を思い出させるのだった。

「書くこと」が大好きだった、理乃は新たな創作活動を始める。

 

 

嫁姑の関係は悪化の一途を辿り、なんと理乃は義母から殴りかかられるという驚愕の事態に発展するのであった。

その事件の影響で入院することになった理乃に、ダリルから大きなお見舞いの花束が届く。

そこで、理乃はダリルの彼女に対する気持ちに気づくのだった。

 

 

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「おふくろ、今は親父と優子おばさんがつきっきりでみてるって……」

 

 

自分の母親が妻を殴ったとなっては、流石の祐介もショックを隠せなかったようだ。

連日の激務と、家庭のゴタゴタでだいぶ疲労したのだろう。

リビングのソファに身をどっと沈め、理乃を見上げたその目の下には濃いクマが鎮座していた。

 

 

「理乃に悪かった……って毎日泣いているって」

 

「そう……」

 

 

もし当たりどころが悪ければ死んで しまっていたかもしれないほどの事態に似つかわしくないほど、理乃の心は穏やかだった。

人を殴ってしまうほど、精神を病んでしまった佐和子のことが逆に不憫に思えてきたからかもしれない。

 

 

「お母様は……ただ幸せになりたいだけだと思うの」

 

 

祐介の表情が一瞬戸惑うように揺れる。

あれだけのことをされたのに、取り乱さない理乃を怪訝に思っているようだった。

 

 

「いや、おふくろが正直あそこまでひどいと思わなかった……」

 

 

祐介がかすかに声を震わす。

 

 

「理乃に散々言われていたのに、まともに取り合わなかった俺が悪かった。こういう事態になるのは、避けられたはずなのに。理乃ありがとう。今まで耐えてくれてたんだね……」

 

 

祐介は、いい人だ……そしていい夫だ。

不満が全くないといえば嘘になる。

でも、 根本的に素直で、自分に非があればきちんと認める。

結婚した頃は、そんな人柄に惚れ込んでいたんだ。

不意に祐介が口を開く。

 

 

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