大都市シンガポールでは、生き馬の目を抜く熾烈な恋愛合戦が繰り広げられている。
スポーツのような国際デーティングゲームの最前線で闘うアラサー女子、それが百合子だ。
彼女は日系金融機関のシンガポール支店で働く現採女子であると同時に、
日本代表としてこの厳しいグローバル恋愛リーグで闘う現役選手でもあるのだ。
最近の主戦場は、今最も効率良く高スペックの男性に出会えると言われる、出会い系アプリの数々。
「あきらめません、籍を入れるまでは!」をスローガンに、「Tinder」をはじめとする様々なアプリでデート相手を見つけている。
さぁ、仕事はそこそこで切り上げて、今夜もいざ……キックオフ!
さぁ、今宵百合子は、ラベンダーエリア にあるSeven & Ate にやってまいりました!
シンガポールでNext チョンバルと言われるこのエリア。かつては小さな金具店や下町工場が軒を連ねていた地域です。
今は、古き良き街並みの中にヒップなカフェやレストランが次々とオープンしている、まさに知る人ぞ知るオシャレご飯スポットなんです!
そして……今夜のお相手は、マットくん、30歳!
「君が百合子だね? 初めまして! マットだよ!」
目の前に現れたのは、目の覚めるようなイケメン!
ライトブラウンの髪に同じくブラウンの瞳。
顔の造作の一つ一つが整っていて、完璧なバランスだ!
青いドレスシャツに薄ベージュの細身のパンツ。
カジュアルなのに、とても身のこなしが綺麗で、彼の周りだけなんだかオーラが! 違う!
次から次へとイケメンと出会い続けて言う百合子も、このクリオリティのイケメンには感嘆の表情を隠せないようだっ!
「初めましてマット! 私、百合子よ。」
このマット君、オーストラリアのシドニー出身で、シンガポール歴は5年目なんだとか。
シドニーといえば、世界で「イケメンに遭遇する確率が高い場所世界ランクトップ5」に入る場所といわれているとかないとか……。
とにかく、オーストラリアの大地と風が、このイケメンを育んだ、と言っても過言ではないでしょう!!
「数年住むとシンガポールに飽きちゃった、なんて言い出す人がいるけど、僕はそうは思わないんだ。最近は、こういう隠れ家系のお店を探し出して、ご飯を食べたり飲んだりするのがすごく気に入っているよ」
クラフトビールを美味しそうに飲んだ後、そう言いながら百合子に微笑みかけるマット君。
(こんなイケメンに口をつけられるクラフトビールの瓶口が羨ましい……)
などと、はしたないことを考えている百合子に気づいている様子は微塵もない!
このマット君、美しい外見からは想像できないような骨太の経歴の持ち主。
シンガポールでPR会社を立ち上げたのが4年前。最近は、空港の免税店の商品ディスプレイを手がけることが多いのだとか。
「今も月の半分ぐらいは、出張なんだ。アイスランドとドイツの空港のプロジェクトが進行中だからね」
空港のプロジェクト。
クウコウノプロジェクト。
う〜ん、なんとも甘美な響きだ! 何のプロジェクトかよくわからなくても!「空港を股にかけるプロジェクト」は響きがかっこいい!!