大都市シンガポールでは、生き馬の目を抜く熾烈な恋愛合戦が繰り広げられている。
スポーツのような国際デーティングゲームの最前線で闘うアラサー女子、それが百合子だ。
彼女は日系金融機関のシンガポール支店で働く現採女子であると同時に、
日本代表としてこの厳しいグローバル恋愛リーグで闘う現役選手でもあるのだ。
最近の主戦場は、今最も効率良く高スペックの男性に出会えると言われる、出会い系アプリの数々。
「あきらめません、籍を入れるまでは!」をスローガンに、「Tinder」をはじめとする様々なアプリでデート相手を見つけてきた。
しかし、イケメンとデートまで漕ぎ着けるものの、そこから先に発展しない。
なにせ、出会う相手がことごとくダメ男。極度のマザコン、元カノとズブズブ、ぬいぐるみ依存症……
お世話になっているMDのアドバイスもあり、百合子はついに「Tinder」以外の方法で男性と出会うことにする。
それはとあるメディアが主催する「シングルスパーティー」で男と出会う、という作戦。
当日そこで百合子は、いけ好かないフツメン「寺迫」と出会う。寺迫は、アラサー独身百合子の、心の柔らかいところをグリグリとえぐるような発言を浴びせ、二人はついに大げんか。風紀を乱したと言う理由でシングルズパーティーの主催者から表に叩きだされてしまうのだった。
場の空気を乱したということで、シングルスパーティーから叩き出された百合子と寺迫。
あんなに大げんかしていたのに、なぜか意気投合し近くのホーカーで飲み直すことにしたようです!
「タイガービール、ツーボトル、プリーーーズ!」
すでに酔っ払っている百合子が大きな声でオーダーする!
運ばれてきたターガービールをトクトクとグラスに注ぐと……。
「カンパーイ!」
元気だ! 非常に元気だ! まだまだ夜はこれからだ百合子!
さっきまでガチギレだったのが嘘のように、上機嫌! 一体どういう風の吹き回しだ?!
「ニッコニコですねー、百合子さん」
フツメン寺迫が百合子の空いたグラスにタイガービールを注ぐ。
意外と寺迫は……優しい!!
毒舌だが、さりげない気遣いができる、こんな男を世間は「いい男」と呼ぶのだが、それが百合子には伝わるか?!
「ありがと♡」
「ところで、なんであのシングルスパーティーに行こうと思ったの? あ、いや男に飢えてるのはわかってんだけど、それ以外になんか理由あんのかなーと思って」
「あんたほんとに嫌味なやつね! いつも一言多いのよ!」
そう言いつつ、百合子、ちょっと嬉しそう!
もう本気で怒っているわけではないようだ!
むしろ寺迫にちょっと好意を持ち始めているのか?!
「Tinderって知ってる? あの有名な出会い系アプリね。前はあれでデートの相手を探してたの。たくさんイケメンと出会えたし、それはそれで楽しかったんだけど……」
百合子頬杖をついて、ちょっと遠くを見ている!
アンニュイモードに突入だ!