世界のエリートが集まる街、シンガポール。
この街の日本人コミュニティのマジョリティを成すのもまた、エリートビジネスマン(とその家族)である。
仕事も遊びも一流である彼らは、羨望と嫉妬の眼差しを浴びる言わば「特権階級」。
オシャレで高級な店などとうに行き尽くしている彼らが、なぜか最終的に行き着く場所……
それが、 気取らない店「喫茶&スナック 夜間飛行」のバータイムである。
シャツの第一ボタンを外して寛ぐ「シンガポールおじさん」達に、普段は絶対に語らない本音を、匿名でこっそりと教えていただいた。
このシリーズの過去記事↓
【今回のシンガポールおじさん】
職業:IT企業マネージャー
年齢:40代前半
海外歴:半年(うちシンガポール半年)
家族構成:妻、娘2人 (日本在住)
「 え、お米変えたの? 日本のお米になったんだ!
へえ、山形の“はえぬき”ね。実はずっと思ってたんだよ。
ここのカレーはマジで本格的だから、日本の美味しいお米と一緒に食べたいな、って。
でも値段を考えると、ちょっとそこまでのリクエストはできないなぁと思って、黙ってたんだけど……
あ、材料費が上がったから、2ドルだけ値上げしたんだ?
そりゃあ、セットで16ドルはちょっと良心的すぎたよねぇ。
うんうん、この味なら、喜んで2ドルくらいは余分に払わせてもらうよ。
ちょ、ちょ、ちょっと待って!!
お金の話はさすがにタブーでしょう。
一ヶ月にいくら使ってるかなんて、話しにくいなぁ……え?
フェイクをたくさん入れるから、絶対身元はバレないって?
そうかなぁ、本当かなぁ。
まあ俺、こっちにそこまで知り合いが多いわけじゃないから、大丈夫かもしれないけど……
くれぐれも気をつけて書いてよ。
俺、妻子がこっちに来るまでは、単身赴任なんだ。
うちの会社では、海外赴任の最初の1年は単身赴任じゃなきゃいけないっていう、謎のルールがあって。
この1年を無事に過ごしたら、妻子を呼んでもいいってことになってるんだ。
だから今は、一人でシンガポールに暮らしてる。
会社が払ってくれてるコンドの家賃は、6000ドルちょっとくらい。
単身赴任にしてはいいところに住んでるな、って?
そうなんだよ。
来年からは家族も来る予定だから、すでに広いところに住まわせてもらってるんだけど、日本円で言ったら月50万円もの家賃補助を出してもらってる計算になるよね。
今住んでるのは、欧米系の駐在員の人もたくさん住んでるコンドなんだけど、末端の駐在員に到るまで手厚い補助を出してくれたりするのは、日本企業くらいのものらしいね。
日本の企業なら、そんなに高いポジションの人でなくても、住宅手当や教育手当が当たり前に出たりするから。
それでも日系企業の駐在員の奥さん達の間では、「あそこのダンナさんの会社は手当がいい」「うちのダンナの所はケチだ」みたいな話題が出たりするらしいから……うちの奥さんもこっちに来たら、そんな愚痴大会に加わることになるんだろうかと思うと、金銭感覚がズレちゃいそうで心配だよ。
俺なんか、食費や交際費も、全然かけてない方じゃないかな。
外食続きだと、財布より先に、胃が悲鳴を上げちゃうからね。
やっぱり夕飯はサラッとしたものが食べたいから、自宅でお茶漬けばっかり食べてるよ。あっさりしたものが食べたいとなると、どうしても自炊が多くなるよね。
外食は週に2回くらいかな。
この店に来て飲み食いしたって、60ドルくらいで収まっちゃうし……家の近くのワインバーで飲む時もあるけど、基本的にはやっぱり一人だから、どんなにかかっても100ドル程度。
ビックリするくらい、お金のかからない生活をしてるよ。
でもさ……こんな俺も、昔……あることにハマって、月に何十万円も浪費してたことがあるんだ。
その「あること」っていうのがさ……