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【Ep. 7】代わりなんていくらでもいるの?外銀マンの彼女の場合

※この物語はフィクションです

我輩はマーライオンである。そっちじゃない、小さい方だ。

 

そう、観光客に大人気のあのでかいマーライオンの傍で、ショボく水を吐いている、ミニマーライオンである。

 

俺たちマーライオンには、それぞれシンガポールの守り神としての担当がある。

 

一番大きなセントーサのオジキは、シンガポール居住者担当。エースであるマーライオンパークのアニキは、観光客担当。

 

そして俺は、そのどちらにも属さない中途半端な人々、いわゆる『浮遊層』を担当している。

 

はっきり言って閑職だが、俺はこの『浮遊層』たちが大好きなんだ。

 

俺が守り神として使える魔法は、二つだけ。

 

人のお腹を瞬時に空かせることと、二日酔いを防ぐことだ。

 

なんの役に立つのかって?

 

いやいや、これがどうして、なかなか役に立つものなのさ。

 

おや? 今宵も、愛すべき浮遊層が一人……

 
このシリーズの過去記事↓

 

 

私は志田原舞、29歳。

 

観光ビザで出入国を繰り返しながら、シンガポールに暮らして6ヶ月。

 

 

でも今日で、こんな生活もおしまいなの。

 

荷造りをする私に背中を向けて、ジャスティンはずっとゲームをしていた。

 

今更話し合うようなこともないのだけれど、かと言って背中を向けられたままなのも辛い。

 

ここ数週間というもの、彼の態度は、目に見えて日に日に冷たくなっていった。

 

こんな人だったかな。日本にいた頃は、もう少し、優しい人だった気がするのだけれど。

 

 

知り合ったのは1年前。

 

六本木のホテルのバーで、私たちは「友達の友達」として出会った。

 

あのあたりで遊んでいるアメリカ人金融マンになんてロクな人はいないとわかっていたけれど、ちょっと癖のあるブルネットの髪の毛や、困ったような笑い顔が、どうも悪い人に見えなくて。

 

柄にもなく少し、ときめいちゃった。

 

 

それに私だってあの頃は、「あのあたりで遊んでる外資系OL」ってやつで、警戒感を持つならお互い様だった。

 

よくよく話をしてみると、私もジャスティンも、けっこうな田舎の出身で。

 

どこか親しみやすさを感じたのは、そのせいだったのかもしれないな。

 

それでも私たちは、あのあたりによくいるイケてる国際カップルみたいな姿勢を崩さずに、さりげなく寝るようになり、やがてさりげなく恋人になった。

 

 

そして半年前、ジャスティンが、いきなりシンガポールに転勤になったんだ。

 

ついて来てほしいなんて、外銀マンが言うわけないよね。

 

だって、彼らは世界のどこへ引っ越したってモテモテで、私にソックリな長身で美人風の女の子たちが、いくらでもどこででも寄ってくるんだもの。

 

だから私は、

 

 

「そろそろ転職しようと思ってたんだよね。シンガポールで仕事探そうかな」

 

 

なんて、精一杯のインディペンデントさを装いながら、呼ばれてもいないのにこの国までついて来た。

 

やっぱりジャスティンのことが好きだったし、このまま他の女の子に取られるのは嫌だったから。

 

それが……それが、まさか。就職活動で、こんなに苦戦することになるなんて。

 

 

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