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【Ep. 20】守り神ミニマーライオンの場合 前編

※この物語はフィクションです

 

我輩はマーライオンである。そっちじゃない、小さい方だ。

 

そう、観光客に大人気のあのでかいマーライオンの傍で、ショボく水を吐いている、ミニマーライオンである。

 

俺たちマーライオンには、それぞれシンガポールの守り神としての担当がある。

 

一番大きなセントーサのオジキは、シンガポール居住者担当。エースであるマーライオンパークのアニキは、観光客担当。

 

そして俺は、そのどちらにも属さない中途半端な人々、いわゆる『浮遊層』を担当している。

 

はっきり言って閑職だが、俺はこの『浮遊層』たちが大好きなんだ。

 

俺が守り神として使える魔法は、二つだけ。

 

人のお腹を瞬時に空かせることと、二日酔いを防ぐことだ。

 

なんの役に立つのかって?

 

いやいや、これがどうして、なかなか役に立つものなのさ。

 

おや? 今宵も、愛すべき浮遊層が一人……。

 

 

このシリーズの過去記事↓

 

 

 

「やぁどうも、お疲れさん」

 

 

マーライオンパークに現れたその老人は、俺、つまりミニマーライオンの前まで来ると、パナマ帽をひょいと持ち上げて挨拶した。

 

 

「あ、お久しぶりです!」

 

 

いきなりの訪問に面食らいながらも、なんとか挨拶を返す俺。

 

このパナマ帽の老人に会うのは、2回目……俺がミニマーライオンになった、あの日以来である。

 

今でこそ守り神・ミニマーライオンとしての姿が板についている俺だが、実は昔からミニマーライオンをやっているわけじゃない。

 

もともとはシンガポールにハネムーンでやって来た、れっきとした日本人だったんだ。

 

ところが新婚だっていうのに嫁に逃げられて……やけになった俺は、もう死んでもいいという思いで、暴飲暴食を繰り返した。

 

そして急性アルコール中毒で病院に運ばれたんだが、その時、不思議な“夢”を見たんだ。

 

その夢というのが、ふわふわとした霧の中で、このパナマ帽の老人と話をしている夢だった。

 

 

「お前、なんであんなに飲んだんだ? 自殺行為だろう」

 

「積極的に死のうとは思ってなかったんですが……まあ、半分くらい、死んでもいいやとは思ってましたね」

 

「半分って、どれくらい? 49%くらい? 51%くらい?」

 

「いや、50%です、正直」

 

「えー、それじゃあ判断しかねるじゃーん!」

 

「判断しかねるって、どういうことですか?」

 

 

俺の素朴な疑問に対し、パナマ帽の老人は、困り顔でこう答えた。

 

 

「俺、仕分け係なんだよね。天国に行く人と、そうじゃない人、分けてるの。自殺だったら本当は天国に行けないで、浮遊霊になるんだ」

 

「ふ、浮遊霊?!」

 

「そう。天国に行けば、また生まれ変わったりできるんだけど、自殺者は基本的に、二度と生まれ変れない浮遊霊になる決まりなの。でも君の場合、難しいんだよね……」

 

「とおっしゃいますと?」

 

「自殺かどうか、本人でさえ断言できないシチュエーションでしょ。もうほんと、半分自殺のようで、事故でもある。まいったなぁ……」

 

 

老人はさも面倒臭そうに頭を掻いている。そしてやがて、ふと思い立ったように、こんなことを言い出した。

 

 

「あ、そうだ、守り神、やってみる?」

 

「ま、守り神ですか?」

 

「そう。あんまり空きがないレアなポジションなんだけどね、浮遊霊になる代わりに、守り神になって他の人たちを助けることで徳を積む、って方法もあるんだよ。ちょうど1個、空きポジションが出たんだけど、やってみる?」

 

「は、はあ……」

 

 

Comment (1)
  1. ぬこ より:

    いつも楽しみに拝読させて頂いています。このシリーズ 大好きだったので終わるのは寂しいですが、、、続きが早く読みたい。。w

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