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【Ep. 17】ワーキングホリデービザで海外を転々とする、自称国際派即戦力男子の場合

※この物語はフィクションです

 

我輩はマーライオンである。そっちじゃない、小さい方だ。

 

そう、観光客に大人気のあのでかいマーライオンの傍で、ショボく水を吐いている、ミニマーライオンである。

 

俺たちマーライオンには、それぞれシンガポールの守り神としての担当がある。

 

一番大きなセントーサのオジキは、シンガポール居住者担当。エースであるマーライオンパークのアニキは、観光客担当。

 

そして俺は、そのどちらにも属さない中途半端な人々、いわゆる『浮遊層』を担当している。

 

はっきり言って閑職だが、俺はこの『浮遊層』たちが大好きなんだ。

 

俺が守り神として使える魔法は、二つだけ。

 

人のお腹を瞬時に空かせることと、二日酔いを防ぐことだ。

 

なんの役に立つのかって?

 

いやいや、これがどうして、なかなか役に立つものなのさ。

 

おや? 今宵も、愛すべき浮遊層が一人……。

 

 
このシリーズの過去記事↓

 

 

俺は須田沼真也、31歳。

 

海外在住歴はもう6年になる。

 

カナダへのワーキングホリデーを皮切りに、イギリス、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリアと、あらゆる国での滞在を経験してきた。

 

 

自分で言うのもなんだけど、色々な仕事を経験してきた分、どこへ行っても即戦力だと思っている。

 

日本食レストランでなんて一体何軒働いてきたかわからないし、今はオーストラリアの農場で、様々な国籍のワーキングホリデー労働者と一緒に、超国際的な環境で働いている。

 

これだけの職歴があれば、ワーホリビザが取れない年齢になっても、引く手数多に決まっているだろ?

 

特にシンガポールあたりなら、正直言って楽勝。今まで滞在してきた国に比べたら、若干「落ちる」感じは否めないものの……まぁ妥協できないラインじゃないしな。

 

そろそろオーストラリアのビザも切れてしまう俺は、シンガポールにしばらく滞在し、サクッと仕事を見つける予定でいた。それなのに……。

 

 

「須田沼さんにご紹介できる仕事はありませんね」

 

 

メガネの奥の目を冷たく光らせながら、人材紹介会社の担当者が言った。

 

 

「あ、給料だったら多少は目をつぶりますよ。そのうち上がるだろうし」

 

「そういう意味ではありません。須田沼さんの年齢で、ほとんど職歴がないケースの場合、ご紹介できる仕事がないんです」

 

「ちょっと待ってください、職歴ならありますよね? ちゃんと見てくれないと困りますよ、世界を股にかけて活躍してきたんだから、これでも」

 

「申し訳ありませんが、アルバイトは職歴のうちに入りません」

 

「でも俺、結構英語できるじゃないですか」

 

「TOEIC600点はアピールポイントとして弱いですね」

 

「600点じゃなくて、610点です」

 

「同じことです」

 

 

一体この人材紹介会社の社員は、何を知っているつもりなのだろう。

 

紹介するのが仕事のはずなのに、俺に紹介する仕事はないだなんて、おかしな話ではないか。

 

そう思った俺は他にもいくつか人材紹介会社を回ったが、どこも似たような反応だった。

 

たったひとつ、オッサンが一人でやっているらしき、この人材紹介会社を除いては。

 

 

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