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【Ep. 15】元彼がシンガポール駐在と知った途端に復縁を企てる独身女性の場合

※この物語はフィクションです

 

我輩はマーライオンである。そっちじゃない、小さい方だ。

 

そう、観光客に大人気のあのでかいマーライオンの傍で、ショボく水を吐いている、ミニマーライオンである。

 

俺たちマーライオンには、それぞれシンガポールの守り神としての担当がある。

 

一番大きなセントーサのオジキは、シンガポール居住者担当。エースであるマーライオンパークのアニキは、観光客担当。

 

そして俺は、そのどちらにも属さない中途半端な人々、いわゆる『浮遊層』を担当している。

 

はっきり言って閑職だが、俺はこの『浮遊層』たちが大好きなんだ。

 

俺が守り神として使える魔法は、二つだけ。

 

人のお腹を瞬時に空かせることと、二日酔いを防ぐことだ。

 

なんの役に立つのかって?

 

いやいや、これがどうして、なかなか役に立つものなのさ。

 

おや? 今宵も、愛すべき浮遊層が一人……。

 

 

このシリーズの過去記事↓

 

 

私は泉綾子、34歳。

 

普段は愛知県にある実家で家事手伝いなんだけど、今はシンガポールに滞在中なんだ。

 

滞在先? すっごく素敵なコンドミニアムよ!

 

プールなんか3つもあって、ジャグジーもある豪華なところ。

 

イーストコーストってエリアなんだけど、LAっぽくてとても落ち着くの。

 

LAには行ったこと、ないんだけどね。

 

どうして私がそこに滞在できているかっていうと、なんと、昔フッた元彼が今、シンガポールに駐在中だからなの〜!!

 

 

自分がこの世で一番モテると信じて疑わなかった10年前。冴えないメーカー社員だった彼が、どうも他から見劣りして見えて、なんだか物足りなくなっちゃったのよね。

 

ちょうどその頃、羽振りの良い男性に口説かれてたし、そっちに乗り換えることにしたの。

 

まさかその男性が実は既婚者で、しかもすでにバツが3つもついている人だなんて、その時は思いもよらなくて……。その後もいろんな人と付き合ったけど、なぜか結婚までは至らないまま。

 

年齢も年齢だし、親からのプレッシャーもあるしってことで、ちょっと焦ってたのね。

 

そんな時にふと、元彼……ワタルって言うんだけど、ワタルのことを思い出したのよ。

 

 

Facebookで検索してみたら、ビンゴ。

 

マリーナベイサンズを背景に、余裕たっぷりに笑う、彼のプロフィールを発見しちゃったってわけ。

 

あの冴えない彼が、今やシンガポールに駐在中なんて、元カノの私もびっくりよ!

 

ワタルの方も、きっと私に未練があったんだろうな。

 

メッセージしたら普通に返してくれたから、「シンガポール、いいな〜♡ お泊りに行きたい♡♡」ってお願いしてみたの。

 

そしたら、「部屋が余ってるし、いいよ」って、あっさりオッケー。

 

「えー、でも彼女に悪いしぃ><」って言ったらなんと、「彼女はいないから大丈夫だよ」との返事。

 

やだもー! これはもう、シンガポールまで押しかけて、なんとか復縁して、駐在妻ポジション狙っちゃうしかないでしょ〜!!

 

 

ってことで、この国に来て、早2週間。素敵なコンドに住んで、夜はワタルのために和食を作って、みたいなことを続けてきたんだけど……なんか、変、なんだよね。

 

なんていうか……そのぉ……ワタルが、全然、手を出してきてくれないの。

 

 

「ねぇワタル、あのさ……ご飯、美味しいかな?」

 

「え? めっちゃ美味しいよ!」

 

 

ある日の夜。

 

私の作ったご飯を食べるワタルに話しかけたものの、なんて本題を切り出していいかわからなかった。

 

うーん。ここは少しずつ話していくしかないのかな。

 

 

「素敵なコンドミニアムに泊めてくれてありがとう、ワタル」

 

「とんでもないよ! お礼にって言ってこんなにうまい和食を作ってくれるんだから、俺の方がむしろ助かってる」

 

「そっか……あのさ、昔のことなんだけど」

 

「昔のこと?」

 

「うん、私、10年前、すごく身勝手にあなたと別れたじゃない? 怒ってたりする?」

 

 

ワタルは私の神妙な顔が相当おかしかったのか、ぷっと吹き出した後、屈託のない笑顔でこんなことを言った。

 

 

「まさか! もう10年前だぜ? それに俺たち、実際問題、今じゃこんなにいい友達だろ」

 

「あ、うん……」

 

 

友達。なんだかその一言が、グサリと痛い。

 

 

「いたかったら、いくらでもいてくれていいんだぜ。メイドさんじゃあ、綾子みたいに美味い和食は作れないもんなぁ」

 

「そ、そっか、ありがとう」

 

「綾子と結婚する人は幸せだろうな」

 

 

どくん。心臓が跳ねる。この一言、やっぱり……ワタルは今も私のことを、想い続けてくれているんだ!

 

 

「あのねワタル!」

 

「ん?」

 

「あのね……私……ワタルともう一度、付き合ってもいいと思ってる!」

 

 

い、言ってしまった。

 

お茶碗を持ったまま、固まるワタル。

 

やがて彼はしばらく何かを考えるように手元を見つめると、こちらを向きなおして、口を開いた。

 

 

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