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【Ep. 8】「私にとって、結婚はビジネスでした 」と葵は言った

※この物語はフィクションです

いつも違う美女と肩を並べているところを、よく目撃されるこの男性。

彼は佐野隆(さのたかし)41歳、日系ITコンサル会社のシンガポール現地法人社長だ。

いわゆる「マネージングダイレクター」と呼ばれる立場だが、実情は常に本社に気を使う中間管理職である。

本社との軋轢や、単身赴任の寂しさが醸し出す、独特の憂いと色気。

それが絶妙に美女の心をくすぐっているようだが……

彼自身は、どうやら全くそれに無自覚なようで。

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ドォン!!

背中からふくらはぎにかけて、いきなりの衝撃が走った。

何かが猛スピードで近づいてくる気配がしてから、1秒とも経たない間の出来事だった。

勢いよく倒れこみ、地面の上で数回転する間に、電動キックボードに乗った子供の姿が視界を横切る。

こいつが、後ろからぶつかってきたのか……

するとその奥から、顔色を変えて走ってくる女性の姿が見えた。鏡のようなセミロングの黒髪に、陶器のような白い肌。なんだっけ、中国の女優の、ナントカって人に似てるな……

「アイムソーリー!! ……あ、日本の方ですか?! 申し訳ありません、あぁ、どうしよう……」

その女性は、英語から流暢な日本語に切り替えると、俺の傍に跪いた。

まるでCGのような見事な美貌が、心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。

それが、俺と葵との、全く予期せぬ出会いだった。

未亡人、と言うと、なんとも扇情的な響きだが……今風に言うと葵は、夫と死別したシングルマザーだ。

シンガポールでも珍しいほどの大金持ちに見初められ、日本からこの国にやってきたのが10年前のこと。

夫が病気で亡くなってからは、女手一つで一人息子を育てているらしい。

複数の不動産を含む莫大な遺産を相続するため、日本国籍を捨ててシンガポール国籍になったそうだ。

まだ30を少し過ぎたばかりの彼女から語られる身の上話は、映画顔負けのドラマチックさだった。

そんな彼女はいつも、夜更けに電話をしてくる。

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