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【Ep. 7】「アタシのパパになってくれない? 」と華は言った

※この物語はフィクションです

いつも違う美女と肩を並べているところを、よく目撃されるこの男性。

彼は佐野隆(さのたかし)41歳、日系ITコンサル会社のシンガポール現地法人社長だ。

いわゆる「マネージングダイレクター」と呼ばれる立場だが、実情は常に本社に気を使う中間管理職である。

本社との軋轢や、単身赴任の寂しさが醸し出す、独特の憂いと色気。

それが絶妙に美女の心をくすぐっているようだが……

彼自身は、どうやら全くそれに無自覚なようで。

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「うわぁっ!」

打ち上げ花火を見上げた華が、子供のような声を挙げた。

ユニバーサルスタジオシンガポールでは月に数度だけ、花火を使ったナイトショー「レイク・ハリウッド・スペクタキュラー」を観ることができる。

次の一瞬、彼女の頰を伝い落ちていく一粒の涙が、花火に照らし出されて輝いた。

俺はそれを、まるで流れ星のようだと思った。

−−−

俺が会社帰りによく立ち寄るバー、OverEasy。

ここはOne Fullertonにあるオープンエアのバーで、マリーナベイサンズを真正面に眺めながら、冷えたビールを楽しむことができる。

たまにここへ来て、バッファローウイングをつまみながらギネスを一杯ひっかけるのが、会食が入っていない夜の定番だった。

この日も気持ち良い風を感じながら一人の時間を楽しんでいたところ、風上の方から、日本人男女が口論する声が聞こえて来た。

観光客の親子だろうか。

まだ10代にも見える若いスレンダー美女と、50は確実に超えているだろう小太りの男が、何やら言い争っている。

「……こんなところで恥ずかしいなぁ! やめてよパパ!」

「ふざけるな、俺はてっきり……いや、いい。もう勝手にすればいい」

「パパ?」

「お前は、自分を何様だと思ってやがるんだ! 調子に乗るのもいい加減にしろよッ!!」

そう言うなり、男は彼女を置いてどこかへと足早に去っていった。

取り残された彼女と俺の目が、合ってしまう。

自分の娘と同じ年頃であろう日本人女性を放っておくことができず、俺はつい、「どうしました?」と声をかけてしまった。

そして、ひとまず俺の隣に座るよう促した。

ここなら後で父親が戻って来ても、すぐにわかるだろう。

「お父さんと喧嘩でもしたのかい?」

俺がそう切り出すと、彼女は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした後、堪えきれなくなったように 笑い出した。

「……アハハハハハハ、やだ、本当の父親だと思ったの?」

「へ?」

「そっか、パパって呼んだのが聞こえたんだ。違う違う、そっちのパパじゃない」

「ええ?」

「つーまーり、パパ活とかそっちの方のパパだよ。シンガポールまで連れて来てもらったんだけど、喧嘩しちゃったの。マジ面倒臭いよね」

「ええええええ?」

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