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【Ep. 6】「縛られるのって結構、気持ちいいかもしんないな……」と環は言った

※この物語はフィクションです

いつも違う美女と肩を並べているところを、よく目撃されるこの男性。

彼は佐野隆(さのたかし)41歳、日系ITコンサル会社のシンガポール現地法人社長だ。

いわゆる「マネージングダイレクター」と呼ばれる立場だが、実情は常に本社に気を使う中間管理職である。

本社との軋轢や、単身赴任の寂しさが醸し出す、独特の憂いと色気。

それが絶妙に美女の心をくすぐっているようだが……

彼自身は、どうやら全くそれに無自覚なようで。

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「隣、いいですか?」

St. Regis hotelのAstor Bar。ジャズの生演奏が終わったタイミングで声をかけられて驚いた。

人間離れした美貌、というのは、こういうことを言うのではないだろうか。180cmに近い身長を、ピンヒールで更にこれでもかと高くした、世にも美しい生き物が俺を見下ろしていた。

「日本の人、ですよね? なんか、日本語話したくなっちゃって」

謎の美女は真っ直ぐな黒髪をファサりとかき上げた。同じ日本人だとは思えない腰の高さだ。

「ど、どうぞ……」

と俺が言うと、彼女は女王のように堂々と、俺の横に腰を下ろした。

なんと、これだけの美女にして、一切化粧をしていない。

いや、正確に言うと、素顔に真っ赤な口紅だけをあかあかと塗っていた。

それでいて、おそらくハイブランドのものと思われる、ビンテージ風ワンピースを完璧に着こなしている。

Astor Barのクラシカルな内装と相まって、まるで一幅の絵画を見ているような光景だった。

異世界の美女に出会ってしまったようで、俺は状況を飲み込むのに苦労する。

「私、しばらく日本に帰っていなくて」

美女は俺のことなど構わずに話し出す。

「日本の方かなー、と思ったら、つい話したくなっちゃって。はじめまして」

「はじめまして……佐野です」

「環です。よろしく」

堂々たるその仕草。

自分の美しさを嫌という程自覚している者だけが持つ、確固たる自信に、鳥肌が立った。

「シンガポールへは……お仕事で?」

「そうです、佐野さんは?」

「俺はここにもう何年も住んでます。このバーには、たまに生演奏を聴きにくるんです」

「そうなんだ! てっきり佐野さんも、宿泊者かなぁって」

「いえいえ、出張だって、こんな高級ホテルには泊まらせてもらえません」

シンガポールのSt. Regis hotelは、全室スイートだと聞いたことがある。

どんな素性の女性か知らないが、この若さでこのホテルに泊まっているということは、少なくとも普通のOLなどではないのだろう。

もっとも、この顔このスタイルでは、普通の生活を送りたくても送れないのかもしれないが。

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