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【Ep. 25】「貧乏になるのが怖いんです」とみどりは言った

※この物語はフィクションです

いつも違う美女と肩を並べているところを、よく目撃されるこの男性。

彼は佐野隆(さのたかし)41歳、日系ITコンサル会社のシンガポール現地法人社長だ。

いわゆる「マネージングダイレクター」と呼ばれる立場だが、実情は常に本社に気を使う中間管理職である。

本社との軋轢や、単身赴任の寂しさが醸し出す、独特の憂いと色気。

それが絶妙に美女の心をくすぐっているようだが……

彼自身は、どうやら全くそれに無自覚なようで。

このシリーズの過去記事↓

シンガポールにいる日本人が、とりわけ社交的になるタイミングがある。

それは、この国に「来た頃」と「帰る頃」だ。シンガポールに来たばかりの人は、誰かに開いてもらう歓迎会や、ネットワークを広げるための飲み会で、何かと忙しくなるのが常である。

そしてシンガポールから去っていく人は、これまた誰かに開いてもらう送別会や、出会った人との別れを惜しむ飲み会で、帰国までの日々を忙しく過ごすことが多い。

「帰国前にもう一度、佐野さんにお会いしたいんですけど……」

と声をかけてくれたみどりさんもまた、そんな「帰る頃」の最中にいる人だった。

何度か大人数の飲み会で一緒になったことがある程度の仲だったが、Facebookではお互いの投稿にコメントを残したことがあったから、親しみを感じてくれていたのだろうと思う。

待ち合わせに指定されたのは、Gurney Driveという、庶民的なペナン料理店チェーンの一店舗だった。

きっと帰国間際だから、なるべく東南アジアらしいものが食べたいということなのだろう。

いつもは日本食か洋食が多いから、俺にとっては新鮮なチョイスだ。

あまり出向かない、センカンのショッピングモールという立地も、こんな機会がなければ訪れないので少しワクワクした。しかし、みどりさんはというと……。

「ごめんなさい、こんなところで」

と、会うなり申し訳なさそうに俺に頭を下げたのだった。

「え、なんでですか? 今夜、俺、めっちゃ楽しみにして来ましたよ」

「佐野さん、性格いいですよね……私、最近、送別会で散財しちゃったもので。家の近くの、こんなチェーン店に佐野さんを呼び出すなんて、お恥ずかしい限りなんですけど……でもどうしても佐野さんに、帰る前にお会いしておきたかったんです」

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