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【Ep. 21】「私を、買ってくださいませんか?」と栄子は言った

※この物語はフィクションです

いつも違う美女と肩を並べているところを、よく目撃されるこの男性。

彼は佐野隆(さのたかし)41歳、日系ITコンサル会社のシンガポール現地法人社長だ。

いわゆる「マネージングダイレクター」と呼ばれる立場だが、実情は常に本社に気を使う中間管理職である。

本社との軋轢や、単身赴任の寂しさが醸し出す、独特の憂いと色気。

それが絶妙に美女の心をくすぐっているようだが……

彼自身は、どうやら全くそれに無自覚なようで。

このシリーズの過去記事↓

オーチャードタワーによく通っている、などとシンガポールの友人に話したら、顔をしかめられるかニヤリとされるか、そのどちらかしかないだろう。

世界各国から集まってきた美女たちが、1階から4階までを埋め尽くすこの建物。

知る人ぞ知る、エスコート嬢たちの溜まり場として、広くその名を轟かせている。

しかし俺の目当ては女性ではない。

このビルにあるイパネマというバーで、フィリピンバンドの演奏を聴くのが好きなのだ。

ここで演奏するバンドは、気づくと顔ぶれが変わっていることが多いのだが、

いつもかなりの実力派がブッキングされていて、まずハズレがない。

もちろんここにもフリーランスのエスコート嬢たちがたむろしているが、だからと言って飲み物が破格でサーブされているというわけでもなく、妙に居心地が良い店なのだった。

この店にいる女性たちも心得たもので、俺が音楽に夢中になっている時に話しかけてくることは、滅多にない。

きっと彼女たちも、「プロの勘」というやつで、客を嗅ぎ分けているのだろう。

しかしこの日は少し、様子が違った。派手なウィッグをつけている割に、妙に地味なワンピースを着た女性が、バンドに聞き入る俺の視界を、さっきからチラリチラリと横切るのだ。

彼女が俺に声をかけたがっているのは明確なのだが、なんというか……プロとは思えないほど要領を得ないその姿が、どことなく微笑ましかった。

やがて、ステージとステージの間の、休憩時間となった。

俺はついその女性が気になってしまって、なんと自分から彼女に声をかけたのだった。

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