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【Ep. 2】「板挟みになるって、幸せなことかもしれないですよ」とリカは言った

 

 

 

「でもね、佐野さん……板挟みになるって、幸せなことかもしれないですよ」

 

「ん? なんでそう思うんだ?」

 

「だってね、板挟みになれる人は、どちらの肩を持つか決められないくらい大事なものが、2つもあるってことなんですよ」

 

 

 

後悔のような、いとしさのような、なんとも表現しがたい感情。

 

それが急激に嵐のように巻き起こり、俺の胸を締め付けた。

 

 

 

10年前のあの時、リカにニューヨーク転勤を決意させたもの。

 

それが一体なんだったのか、俺は今頃になってようやく理解しはじめたのだ!

 

 

 

それは、若者ゆえのドライさではなく……俺を板挟みにしたくないがための、優しさだったのかもしれない。

 

いやもしかするとむしろ、板挟みにさえもできない関係性の軽さに耐えかねて、日本から逃げ出したくなってしまったのかもしれない。

 

 

 

家庭を壊す気など全くなかった俺の態度が、彼女をどれだけ傷つけたのだろう。

 

俺にとっては、一夜の過ちだった。

 

しかし彼女にとってそれは、過ちではなかったのかもしれない。

 

精一杯の気持ちを込めて俺に抱かれてくれた、大切な一夜だったのかもしれない。

 

 

 

「……ごめん」

 

 

 

たまらずそう謝った俺に、リカは何も言わず微笑んだ。

 

にぎやかな店内。

 

家族連れの笑い声。

 

あの深夜営業の中華料理屋は、今もあそこにあるのだろうか。

 

 

 

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