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【Ep. 19】「ええ、本当に、どこのおバカさんでしょうね……」とさゆみは言った

※この物語はフィクションです

いつも違う美女と肩を並べているところを、よく目撃されるこの男性。

彼は佐野隆(さのたかし)41歳、日系ITコンサル会社のシンガポール現地法人社長だ。

いわゆる「マネージングダイレクター」と呼ばれる立場だが、実情は常に本社に気を使う中間管理職である。

本社との軋轢や、単身赴任の寂しさが醸し出す、独特の憂いと色気。

それが絶妙に美女の心をくすぐっているようだが……

彼自身は、どうやら全くそれに無自覚なようで。

このシリーズの過去記事↓

普段の俺なら、バーで隣になった女性に自分から声をかけることなんかしない。

けれども俺は酔っていたし、無視するにはあまりに美しい日本人女性だったものだから、思わず、事故のような勢いで話しかけてしまった。

「お綺麗ですね」

昔見たアジア映画に出ていた女優に似ている。

彫りが深くはっきりしているのに、どことなく儚げな印象がある顔立ち。

その端正な頰で揺れるボブヘアが、これまた艶めいていて美しかった。

話しかけられたことに相当びっくりしたのだろう、整った顔に、驚きの色が広がる。

「すみません、あんまりにもお綺麗なので、話しかけてしまいました」

「……いえ……話しかけていただけて、光栄です」

「あは、あはは、まいったな。こんなに美しい方に、こんな風に言っていただけるなんて、今夜はよく眠れそうです」

そんなことを言っておいて、自分自身で、オジサンみたいだなと苦笑する。

いや、俺は立派なオジサンなのだから、別にオジサンみたいなことを言っても良いはずなのだが。

俺はなんだか気恥ずかしくなって、ちゃんと自己紹介をし直すことにした。

「はじめまして、佐野です。お楽しみのところお邪魔してすみません」

「……はじめまして、さゆみです」

「さゆみさん、こちらにお住まいですか?」

「はい。もう4年になります」

「あ、じゃあ俺と一緒だ!」

そんな他愛ない会話だったが、共通点が見つかった俺はますます上機嫌になった。

我ながら、酔っているな。

時折、酔っているのになんだか家に帰りにくい夜、がある。

今夜はそんな夜だった。

よく飲みに行く他社のMDと、居酒屋でいいだけ飲んだのに、それでもなぜか帰りたくなくてこのバーに寄ったのだ。日本人のマスターと少しおしゃべりでもできればと思っていたのだが、思いがけず、こんなに美しい話相手に恵まれた。

偶然の幸運に、つい饒舌になってしまう。

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