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【Ep. 18】「もう、うちの店には来ないでいただきたいんです」と翔子は言った

※この物語はフィクションです

いつも違う美女と肩を並べているところを、よく目撃されるこの男性。

彼は佐野隆(さのたかし)41歳、日系ITコンサル会社のシンガポール現地法人社長だ。

いわゆる「マネージングダイレクター」と呼ばれる立場だが、実情は常に本社に気を使う中間管理職である。

本社との軋轢や、単身赴任の寂しさが醸し出す、独特の憂いと色気。

それが絶妙に美女の心をくすぐっているようだが……

彼自身は、どうやら全くそれに無自覚なようで。

このシリーズの過去記事↓

シンガポールに来てからずっと通っていた美容室が、閉店してしまった。

突如として頼りの美容師を失ってしまった俺は、また新しい美容室を開拓することに一抹の面倒臭さを感じていた。

「いつもの感じで」とオーダーできなくなってしまったのは、結構痛い。

日系フリーペーパーをパラパラとめくっていると、大手美容室の広告が目に入った。

自宅からかなり近いところに、支店がある。

電話をし、男性美容師を頼んだのだが、その店舗にいるのは全員女性とのことだった。

同性の方が気を使わなくて良いのだが、致し方ない。

「ではどなたでも良いです」とお願いし、予約を入れた。

相性の良い美容師であることを願うしかないだろう。

「佐野さん、はじめまして! 蒲田翔子と申します、よろしくお願いします!」

元気よく挨拶してくれた蒲田さんというその美容師は、まだ20代前半に見えた。

明るく染めた長い髪がつやつやと輝いている。

流行りの化粧に引き立てられた大きな瞳が印象的な、可愛らしい人だった。

若いが、どことなく手際が良さそうで、ホッとする。

「よろしくお願いします。実は、いつもお願いしてた美容室が、閉まっちゃいまして……なんか適当に、いい感じに見えるよう整えてもらえますか」

「わかりました。前回美容室に行ったのって、どれくらい前ですか?」

「1ヶ月強ですかね」

「じゃあここは、このくらいで……あとこちらは、このくらいで、全体的にスッキリしましょうか」

「もう全然お任せしますんで、よろしくお願いします」

美容室でオーダーするのは、どうも苦手だ。

我ながら不親切なオーダーであることに申し訳なさを感じながら、初対面の彼女に身を任せた。

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