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【Ep. 16】「お座席が魅力で決まるなら、きっとあなたはファーストクラス……」と千朝は言った

※この物語はフィクションです

いつも違う美女と肩を並べているところを、よく目撃されるこの男性。

彼は佐野隆(さのたかし)41歳、日系ITコンサル会社のシンガポール現地法人社長だ。

いわゆる「マネージングダイレクター」と呼ばれる立場だが、実情は常に本社に気を使う中間管理職である。

本社との軋轢や、単身赴任の寂しさが醸し出す、独特の憂いと色気。

それが絶妙に美女の心をくすぐっているようだが……

彼自身は、どうやら全くそれに無自覚なようで。

このシリーズの過去記事↓

羽田発、シンガポール行き。

出張帰りの機内は空いていた。

久々に乗る日系航空会社は心地よく、エコノミーでも十分に快適な旅だ。

日本出張が多い他社のMDは、マイルが貯まって仕方がないと笑うが、さほど出張の機会がない俺にとって、プラチナだとかゴールドだとかのメンバーステイタスは夢のまた夢だった。

それでもしっかりと満足度の高いサービスを提供してくれるのだから、やはり日系航空会社は格別だ。

着陸まで2時間を切った頃。
映画に観入っていた俺の席の横を、クラシカルな制服に身を包んだ客室乗務員が横切った。

と同時に彼女は、俺の座席テーブルの上に、小さく折りたたまれたメモを置いていったのだ。

【シンガポールにお着きになりましたらご連絡ください。090-XXXX-XXXX 松本】

こ、これはもしかして、週刊誌で読んだことがある、「客室乗務員からの個人的なお誘い」というやつなのだろうか……?

いや、エコノミークラスに座っている、常連でもなんでもない俺のような奴に、そんなお誘いが来るはずなどない。

きっとこれは、日本の地上職の方か誰かの電話番号なのだろう。

あらかた忘れ物とか記入忘れとか、その手のことがあったに違いない……。

俺は期待してしまいそうになる自分を、そんな辻褄で黙らせて、再び映画に集中しようとした。

しかし、先ほど彼女が通り過ぎて行く際に見えた、白いふくらはぎが、チラチラと思い出されて集中できなかった。

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