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【Ep. 15】「私……すぐ寝ちゃうんです」と亜利沙は言った

※この物語はフィクションです

いつも違う美女と肩を並べているところを、よく目撃されるこの男性。

彼は佐野隆(さのたかし)41歳、日系ITコンサル会社のシンガポール現地法人社長だ。

いわゆる「マネージングダイレクター」と呼ばれる立場だが、実情は常に本社に気を使う中間管理職である。

本社との軋轢や、単身赴任の寂しさが醸し出す、独特の憂いと色気。

それが絶妙に美女の心をくすぐっているようだが……

彼自身は、どうやら全くそれに無自覚なようで。

このシリーズの過去記事↓

亜利沙は、あるメーカーに勤務する優秀なセールスパーソンだ。

彼女の上司にあたるMDと飲んだ際、「今月もトップセールスだったので、ご褒美に連れてきました」という触れ込みで登場したのが彼女だった。

しかし、むしろ亜利沙と飲む口実を探していたのは、あのMDの方だったのだろう。

なるほどトップセールスになるのもうなずける、一緒にいて本当に気持ちが良い女性で、しかも……豊満なバストが、とても印象的で……なんだか、一緒にいるだけで、男なら誰もが口元を緩めてしまう。

そんな魅力を持った女性だった。

そんな亜利沙が急に、「仕事のことで、相談したいことがあるんです」と俺に直接連絡を取ってきた。

確かにあれから数度、飲み会でまた顔を合わせることはあったけれど、相談を持ちかけてもらえるほど信頼されているとは知らなかった。

少し悩んだが、20代後半の、これから社会人として伸び盛りの人が、仕事に悩んだ時に俺を思い出してくれたのだ。

社会の一員として、それは非常に誇らしいことのように思えた。

亜利沙がもし男だったら、間違いなく即答でOKしただろう。

ここで彼女の相談を受けないのは、ある意味性差別であるような気もして、俺は彼女と待ち合わせることにした。

水曜の夜。シェントンウェイにあるThe Bank Bar + Bistroに現れた彼女は、俺を見つけるなり、満面の笑みで駆け寄ってきた。

コンサバティブなワンピースの下で、豊満なバストが揺れている。

うう。決して大きなバストが好きというわけではないのだが、どうしても視界に入ってきてしまう。

俺は、定まらない目線を、意思の力でぐっと彼女の目元へ寄せ、軽く会釈した。

「亜利沙ちゃん、久しぶりだね」

「お久しぶりです! ごめんなさい、佐野さんのこと、急に呼び出したりして……」

「いやいや、こういう時に思い出してもらえるなんて、社会人の先輩としてとても光栄だよ」

「そう言っていただけると私……本当に救われます!」

情感たっぷりの潤んだ目で俺を見つめる亜利沙。

まさか、俺のことが好きなんじゃ……いやいや、そんなわけはないだろう。

彼女は普通にしているだけで、周囲の男性を勘違いさせてしまうような、そんなところがあった。

もちろんそれは彼女のせいではない。

実際に今着ている服装もかっちりしたもので、なるべく体のラインが出ないように気を配られているし、髪にも化粧にも媚びたところはない。

そもそも彼女は生まれつき、男好きのするタイプなのだろう。

いくつかアラカルトで料理を頼み、ビールをオーダーしたところで、亜利沙がため息まじりにこんなことを言い出した。

「私……今の仕事、ちょっと息苦しいなって思うんです」

「ほう、それはまた、どうして?」

「契約は取れるんですけど……お客様とのトラブルが、正直、すごく多いんですよ」

とても意外な告白だった。

こんなに感じが良くて、しっかりとした女性の、どこに問題要素があるというのだろう。

「トラブルって、どんなトラブルだい?」

「えっと……佐野さんに言うの、すごく恥ずかしいんですけど……」

「あ、もちろん、言いたくなければ全然いいよ」

「いいえ、言わないと話が進められないので、言います。私……私……すぐ寝ちゃうんです」

空気が、一瞬、完全に停止した。

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