常夏のコスモポリタン・シティ、シンガポール。
恋が似合うこの街には、珠玉のラブストーリーの舞台としてふさわしい、数々のデートスポットが存在する。
しかし嘆くべきは昨今の「恋愛離れ」。
多くのシンガポール在住日本人が、恋やデートそのものに対する消極的な“めんどくささ”を持て余している。
そこでナイトライフシンガポール編集部は、この街にはびこる「デートめんどくさい症候群」を駆逐すべく立ち上がった!
(なるべくしがらみの少ない)男性読者を問答無用でおすすめデートスポットに連れ出し、在住者を代表して評価してもらうのがこの企画。
さらにはその評価と当日の写真を元に、あなたの恋心を刺激するショートストーリーを作成することとした。
リアルと妄想が交錯する半フィクションが、眠っていたデート欲を揺り起こす?!
気になっている人との、最初で最後のデート。
楽しみで嬉しくて、何を着ていこうかひとしきり悩み、そしてふと胸が痛む。
南野さんは、本帰国の報告と一緒に、「たまには歩いて出かけない?シンガポール最後の思い出作りに、付き合ってくれたら嬉しい」と、あの日、デートに誘ってくれたのだった。
「なっちゃん、今日は付き合ってくれてありがとう!
私服、新鮮で、いいね」
そう、お互いスポーツウェアでしか会ったことがない私たちは、こんな風に待ち合わせて、普段着で顔を合わせるのも初めてだった。
ワンフラトンで待ち合わせ、いつものランコースである、ベイエリアを散歩する予定。
南野さんいわく、「最後は一番シンガポールっぽいところで締めくくりたいから」だそうだ。
最後、か……。
好きになった途端に、道は閉じてしまって、始めることもできない恋……。
「どうしたの?」
急に黙った私の顔を、南野さんが心配そうに覗き込んでくる。
ちょ、ちょ、顔近いですって!
南野さんって、人と心の距離が近いのか、長年の海外暮らしのせいなのか、時々無防備にドキッとさせるようなことをする。
「じゃあね、心理テストです。
男性の好きなタイプを、3つ挙げて下さい」
「わっ、ずいぶんと唐突ですね!
うーん……明るい人、スポーツ好きな人、思いやりがある人」
「なるほど。では、その3つのタイプを満たした男性が目の前に2人現れました。
どちらかを選ぶために、新しく加えるとしたら、4つ目の条件は何ですか?」
「えーっ、何だろう。
真面目な人かな、いやいや違う気がする……分かりました!
ご飯を美味しそうに食べる人!!」
「あははは!!やっぱりなっちゃんって、最高だなー!!」
「何笑ってるんですか~、種明かしは?
ちなみに南野さんはどう答えたんですか?」
「僕は大変言いづらいんだけど、まぁ、正直に言うから、どうか引かないで……。
健康的な人、明るい人、優しい人ときて、4つ目なんて思い浮かばないから、飲み会中のウケ狙いで、スタイルのいい人って答えたんだよ。
そしたら、4つ目の条件こそ、実は本人にとって、一番重要視してるポイントらしいんだ……」
「あははは!南野さん、世界中のレディを敵に回しましたね……!」
「そう言わないで~。
でも、なっちゃんがやっと笑ってくれたから、良しとする」
途中シュンとしながらも照れ笑いする南野さんは、年上だけれども、とてもキュートで愛おしかった。